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惑星異聞【白】 1-5

 そして有能だが上司の手には負えないシヴァを地上軍からアレーンが引き取って約1年経つが、メリー・ウィールでシヴァのパートナーを務めた隊員は全員ここからいなくなっている。さきほど除隊願を置いていったのも、つい先日まではシヴァのパートナーだった。再起不能まではいかないが、シヴァのせいで片腕を失う大怪我を負う羽目に陥ったのだ。そのままメリー・ウィールの実戦部隊員としての任務を続けるのは肉体的にも無理だし、なによりも精神的にそんな気分になれないのは当然だろう。
 隊長であるアレーンも、いつかこんな結末を迎えるだろうことは最初から覚悟していた。妥当な結果ではあるのだが、今回はもしかしたらうまくいくかもしれないという希望を、少しとはいえ抱いていたのも本当だ。その僅かな期待を木っ端微塵に砕かれたことに落胆する余裕もなく、あの爆弾のような部下を制御するための次の方法を考えなければいけない方が頭が痛い。
 アレーンも、自分自身が乗り出すのがおそらく一番手っ取り早いことはわかっている。だが統括という立場にある以上、そういうわけにもいかない。そしてそんな面倒なことに自ら首を突っ込むのは、絶対にごめんだった。考える労力を放棄して終わりが見えない苦労を背負わされるよりは、正解を発見する確率がたとえ低くても人身御供を差し出す方法を選ぶ。
 とはいえさすがにここまで人的被害が続くと、周りもそうそう黙っていてはくれないだろう。それでなくても、ある種の特殊権限を持つメリー・ウィールというのは複雑な立場なのだ。少なくとも、連邦軍の中枢である統合作戦本部とはかなり仲が悪い。必要以上に目をつけられるわけにもいかなかった。
 当の問題児であるシヴァを切り捨てられれば話は早いのだが、少なくとも功績を挙げている以上そういうわけにもいかない。扱いは難しいが、軍隊に必要な要素であることも否定はできない。だからこそ上層部もこの問題児をアレーンに押しつけたのだ。なんとか制御しろ、と。
 今のところ制御にはことごとく失敗しているが、アレーンもそれを放棄するつもりはなかった。だが、やはりため息は出る。
「わたしもあの子は嫌いじゃないしねえ。誰か、いいストッパーになってくれる人は……おや?」
 ひとりごちながら端末を操作していたアレーンの手が、何かを見付けたのかふと止まった。
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