惑星異聞【白】 1-3

 グライア連邦軍情報部直属特殊戦闘連隊、通称メリー・ウィール。この長い正式名称と妙に可愛らしい通称を持つ組織は、軍部の一組織であるにも関わらず独自の影響力を持ち、ある種治外法権ともいえる権力を持つ連邦政府の切り札だ。……といえば聞こえはいいが、実際のところ隊員の命の保証がされない単なるなんでも屋と化している。外敵の存在しないグライア文化圏において、そもそも軍隊という組織そのものがあまりせっぱ詰まった状況には置かれていないためだ。
 そして何にでも使える便利な組織であると同時に、ここは実力はあるが上司の手に負えない連中が送り込まれる問題児の吹き溜まりでもある。今、責任者であるアレーンが頭を悩ませているのは、その問題児の筆頭ともいえる人物のことだった。
 メリー・ウィールの実戦部隊員・通称コマンドは、2人一組でローテーションを組んで仕事をこなす。人数を集めて処理すればいいような仕事は何も特殊部隊に回す必要もないから、メリー・ウィールは少数精鋭が基本だ。だがいくら少数精鋭といっても単独任務は危険すぎる。その点2人であれば1人では見えないものも見えてくるし、お互いの苦手分野をフォローすることもできる。
 ……というのが、パートナー制を採用している建前の理由だ。本音の部分は、元々問題児の吹き溜まりであるメリー・ウィール、隊員をたった1人で野放しにしておくと何をやらかすかわからない、そこにあるらしい。コンビを組ませることで個性が豊かすぎる隊員たちに、お互いを牽制しあってもらう必要がある。そうでもしないと制御できない、というのが本当のところらしい。
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