惑星異聞【白】 2-3

「つまり、どーしろって?」
 わからないことは聞くに限る。コマンドである以上は素人である依頼人に弱味を見せられない、などという思考はシヴァにはない。そんなプライドにこだわるつもりはないというよりは、今までそんなことを考えなければいけない立場になったことがなかった。
 そんな考えるのが面倒だと言わんばかりのシヴァの声色に、なぜかリーンがにっこりと笑う。
「そうですね。かなりはた迷惑な話になりますけど」
 リーンには、なにか考えがあるようだった。
 そういえば、とシヴァは思い出す。パートナー不在ままこの任務につくことになったシヴァのサポートは、依頼人が務めてくれるとアレーンが言っていた。
 このどう見ても十代前半にしか見えない子供がサポート担当なのかと思うと、さすがのシヴァも少しばかり頭が痛くなる。だが、シヴァよりは頭脳労働に向いているのかもしれない。
 正直なところ、使い慣れていない頭を使わなくてすむならシヴァはなんでもよかった。だから尋ねはしたものの、あまり真剣にリーンの言葉を聞くつもりはなかったのだ。
 だが。
「ここで相手が動きを見せるのを、待つしかないんじゃないですか?」
 つまり、このホテルが襲撃されるまで待て、と。
 かわいらしい笑顔のまま、リーンははっきりとそう口にした。
「餌は撒いておきました。そのうち、食いついてくると思いますよ」
「つーか、エサって」
 今まででいちばん、嫌な予感がする。依頼人たちに怪我をさせないようにと、期待してなさげにアレーンから言われた注意が、シヴァの脳裏で反響している。
 話半分に聞き流すつもりが、それどころではなくなっていた。
「メイと僕ですけどね。なんせ今までになく堂々と、このホテルに入ってきましたから」
 事の重大さを理解していないわけではないだろうに、リーンの表情も声も明るい。
 そして予想通りだった返答に顔をひきつらせながら、シヴァは床を踏み抜く勢いでソファから立ち上がった。
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