惑星異聞【白】 2-8
「まあ、いいです。素人の僕があれこれ口を出すよりは、これごとあなたにお任せしたほうがよさそうですしね。はい、どうぞ」
それでも必要事項は伝えたと判断したのか、やはりリーンはため息ひとつですませると、地図をシヴァへと差し出す。それをつい勢いで受け取ってしまってから、シヴァは複雑な表情を見せた。
……まあ、楽が出来たと思えばいいのだが。
よくわからないが、なにかが釈然としない。
だが、シヴァにはそれについて考え込んでいる余裕もなければ、そもそもそれをするための適性もなかった。つまり、やろうとするだけ無駄ということだ。
結果として。
「お……おう、サンキュ。んじゃ、とにかくこのセキュリティセンターさえ押さえときゃ、ホテル内をアテもなくかけずり回る必要はねぇってことだな」
シヴァは深く考えずに、先を急ぐことにした。
地図をざっと見た様子では、監視カメラのポイントもすべてチェックしてある。死角となる場所がほぼないように計算されているらしく、これを一元管理できるのならば、たとえメイを狙っている連中が入り込んできても早期発見が出来そうだ。
「監視カメラが生きてれば、そうなりますね」
冷静に、リーンが付け加える。できることならあまり考慮したくなかった点を指摘されて、シヴァは口を歪めた。
「死んでる監視カメラなんざ、モノの役にも立たねーじゃねぇかよ」
「ですから、発覚を遅らせたい相手がまず最初に潰そうとするんじゃないですか」
「わかってるっつの。オレだって、自分が忍び込むならそーするしな」
もし監視カメラの機能が停止している箇所があったのなら、それはそれで痕跡のひとつとなる。その近くに、見つかってはまずい者が潜んでいるという証拠だ。
とにかく、早くセンターへ行くべきだろう。どうせ、このホテルに詰めている警備員は、リーンが盛大な罠を仕掛けていることなど知らないのだ。
地図をつかみ、シヴァはそのままきびすを返して部屋を出ようとする。その背中に、リーンの声がまたしても追い打ちをかけてきた。
「それで、どうしますか? メイと僕もついていったほうがいいんでしょうか」
「勝手にすりゃ……うがー、そういうワケにもいかねぇのか?」
シヴァが優先すべきことは、依頼人の安全。だが、素人を連れていては上手く動くことができそうにない。
いつもであれば相方に任せてしまえることもすべて自分で処理しなければいけないことに、シヴァはもう何度目になるかわからないもどかしさを感じる。
「僕が知るはずないじゃないですか」
「だああ、なんかあったら連絡すっから! それまで、ここから一歩も動くな。いいな!?」
「非常事態になったら?」
面倒になって適当に怒鳴ったら、またしても冷静な問いが返ってくる。答えなければならないのもいちいち面倒だが、自分で考えるよりははるかにマシだった。
「そりゃ、安全第一だ。さっさと逃げろ」
「アバウトですね……まあ、わかりました」
リーンが、肩をすくめる。
今度こそそれを完全に無視して、シヴァはドアを蹴破る勢いで部屋を飛び出した。
それでも必要事項は伝えたと判断したのか、やはりリーンはため息ひとつですませると、地図をシヴァへと差し出す。それをつい勢いで受け取ってしまってから、シヴァは複雑な表情を見せた。
……まあ、楽が出来たと思えばいいのだが。
よくわからないが、なにかが釈然としない。
だが、シヴァにはそれについて考え込んでいる余裕もなければ、そもそもそれをするための適性もなかった。つまり、やろうとするだけ無駄ということだ。
結果として。
「お……おう、サンキュ。んじゃ、とにかくこのセキュリティセンターさえ押さえときゃ、ホテル内をアテもなくかけずり回る必要はねぇってことだな」
シヴァは深く考えずに、先を急ぐことにした。
地図をざっと見た様子では、監視カメラのポイントもすべてチェックしてある。死角となる場所がほぼないように計算されているらしく、これを一元管理できるのならば、たとえメイを狙っている連中が入り込んできても早期発見が出来そうだ。
「監視カメラが生きてれば、そうなりますね」
冷静に、リーンが付け加える。できることならあまり考慮したくなかった点を指摘されて、シヴァは口を歪めた。
「死んでる監視カメラなんざ、モノの役にも立たねーじゃねぇかよ」
「ですから、発覚を遅らせたい相手がまず最初に潰そうとするんじゃないですか」
「わかってるっつの。オレだって、自分が忍び込むならそーするしな」
もし監視カメラの機能が停止している箇所があったのなら、それはそれで痕跡のひとつとなる。その近くに、見つかってはまずい者が潜んでいるという証拠だ。
とにかく、早くセンターへ行くべきだろう。どうせ、このホテルに詰めている警備員は、リーンが盛大な罠を仕掛けていることなど知らないのだ。
地図をつかみ、シヴァはそのままきびすを返して部屋を出ようとする。その背中に、リーンの声がまたしても追い打ちをかけてきた。
「それで、どうしますか? メイと僕もついていったほうがいいんでしょうか」
「勝手にすりゃ……うがー、そういうワケにもいかねぇのか?」
シヴァが優先すべきことは、依頼人の安全。だが、素人を連れていては上手く動くことができそうにない。
いつもであれば相方に任せてしまえることもすべて自分で処理しなければいけないことに、シヴァはもう何度目になるかわからないもどかしさを感じる。
「僕が知るはずないじゃないですか」
「だああ、なんかあったら連絡すっから! それまで、ここから一歩も動くな。いいな!?」
「非常事態になったら?」
面倒になって適当に怒鳴ったら、またしても冷静な問いが返ってくる。答えなければならないのもいちいち面倒だが、自分で考えるよりははるかにマシだった。
「そりゃ、安全第一だ。さっさと逃げろ」
「アバウトですね……まあ、わかりました」
リーンが、肩をすくめる。
今度こそそれを完全に無視して、シヴァはドアを蹴破る勢いで部屋を飛び出した。
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