惑星異聞【白】 2-6

「……おい」
「一応、これをどうぞ。シヴァさんにとっては、あってもなくても同じような気もしますけど」
 大体の構造なら、建物そのものを見ればわかる。少なくともホテルのパンフレットに載っているような館内案内図なら見るまでもない。シヴァにとっては、そうだった。
 だが、今見せられているこれは違う。かなり大きな紙に描き込まれているその内容は予想以上に細かい。
 公開されている見取り図に、配線状況やセキュリティに関するデータなどあるはずがない。それなのに目の前にあるそれには、本来であれば決して公にはされないようなデータがきっちりと描き込まれていた。
「同じじゃねぇよ。コレ、どこで手に入れた?」
「秘密です」
 それは、新聞やパンフレットと同等のものではない。室内に置かれた非常用案内図などとは比べものにならないほど、重要なものだ。
 それなのに、そんなものをどこからともなく調達してきたリーンは、にこにこと曇りのない笑顔を見せている。
「……このクソガキ」
「はい?」
「なんでもねぇよ、それよこせ!」
 この出会ったばかりの少年を殴りつけたい衝動を抑えるのに、シヴァはめったにしない努力をする羽目になった。
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