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惑星異聞【白】 2-9

「……やれやれ」
 勢いよく開け放たれたままになっていた部屋のドアが、ゆらゆらと揺れている。
 その揺らめきを見るともなしに眺めて、リーンは静かにため息をついた。
 予想通りなのか。
 それとも、予想以上なのか。
 どちらにしろ、これからが本番。
 今、ここで呆れている場合ではない。
「リーン? どうしたの?」
「ん? なんでもないよ」
「そう……?」
 いつの間にかすぐ側にちょこんと座り込んでいたメイが、瞬きをしながらリーンの顔を見上げていた。わずかに首を傾げているところを見ると、リーンの返答に納得はしていないようだ。
「ま、それもそうか」
 リーン自身、それでごまかせるとも思っていない。
 メイはいろいろな部分が実年齢より幼いとはいえ、感覚そのものは鋭い子だったから。
 それに。
「リーン?」
「後でちゃんと教えてあげるよ。さて、メイ。準備しようか」
 時間がない。やることは山積している。
 にこやかな笑みを作ると、リーンは目を丸くしているメイの手を取って立ち上がらせた。
 リーンの笑顔を見て、メイもふわりと笑う。
「うん」
 今のメイにとって、リーンは唯一信頼できる存在。
 それはリーンもよく知っていた。今までメイの身の安全を守ってきたのは、他でもないリーンなのだから。
 そして、その信頼を裏切る気もない。
 ポケットの中から小さい透明な石を取り出して、リーンはもう一度笑う。
「さっきのお兄ちゃん、なにやらかすかわからないからね」
「はぁーい」
 言われた意味を理解しているのかいないのか、楽しそうに笑っているメイの頭を笑顔で撫でて。
 リーンは、部屋のドアを静かに閉めた。
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