「う〜ん」
ノートの上を滑らせていた手を止め、伸びをする。肩ががちがちで痛い。
受験勉強っていうのも、結構大変なんだな・・・。
高校進学のときはそれ程大変だとは思わなかった受験勉強も、さすがに大学入試ともなると、覚えなければならないことが格段に増えている。
何になりたいか、何をしたいかっていうのは、まだ漠然とした思いしかないけれど、大学へは行っておきたかった。
少し休憩する為立ち上がり、キッチンへ向かう。
コーヒーを沸かし、カップを持って部屋へ戻って来た時、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい! 今行きますー」
カップを机に置き、ドアへと向かう。
覗き窓から見えた顔は・・・
あれ? しゃ、弦月じゃないか!? ・・・どうしよう・・・。
一瞬、このまま無視してしまおうかとも思ったが、さすがにそれは可哀想かと思い直し、チェーンを外し、ドアを開けて弦月を招き入れる。
「よッ、アニキ! 元気しとったか?」
にこにこと嬉しそうな弦月。それに対して僕は・・・。
「元気か、って・・・おととい会ったばかりだろ?」
内心の動揺を押し隠し、呆れ顔で言い放つ。
すると、そんな僕の言葉に弦月の顔がフッと寂しそうに曇る。
ズキッ
胸の奥のどこか、僕も知らない場所に何かが刺さったような気がする。
ハァ・・・。
心の中で、そっと溜め息をつく。
一体、いつから僕はこんな風になってしまったんだろう・・・。
弦月と出会ったばかりの頃、僕は一人っ子だったから、弟が出来たみたいで嬉しかった。アニキって呼ばれるのはちょっとくすぐったかったけど。
いつもにこにこ笑ってて、感動屋で、時にはいっぱい笑わせてくれて、側に居ると居心地良くて楽しかった。
それなのに・・・いつの頃からかその笑顔を見ると胸がドキドキするようになって・・・。
それだけじゃない。あの視線・・・。真っ直ぐに僕を見つめる視線を感じると、なんだか身体が熱くなる。
・・・そんな心の内を知られたくなくて、つい冷めた態度をとってしまうようになった。
だけど、そうした途端に弦月の顔は、捨てられた子犬のように寂しそうになって・・・。
その度に今度は胸がきりきりと痛くて、苦しくて、切なくて、弦月の顔を見ていられなくなった。
・・・こんな感情が普通なんと呼ばれているのかは分かっていた。
だけどそれを認めてしまったら、もう今まで通りではいられない。
そして、もし知られてしまったら。
・・・もう、きっと弦月は僕に笑いかけてくれなくなる。側に居られなくなる。
絶対に気づかれるわけにはいかなかった。
「で、何か用でもあったのか?」
コーヒーをもう一杯入れて部屋へと戻る。
「おッ、ありがとさん。 ・・・いやァ、特に用、ってワケでもあらへんけどな。ちょっとアニキに話があって来たんや」
「・・・話?」
僕がわざわざ家までやってきての話に興味を持ち、先を促すが、弦月はなんだか切り出すのを迷ってるみたいだ。
「・・・うーんとなァ、わい春休みに入ったら一回国に帰ろうかと思うてるんや。一応手紙は書いたんやけど、姉ちゃん達に、直接今回の事話さなあかんしな。それで・・・」
そこまで言うと、弦月はうーん、と唸ってまた迷いだす。そんな表情が可愛くてつい見とれてしまっている自分に気がつく。
「なんだよ、弦月。・・・もしかしてお土産は何がいいか?とか言うんじゃないんだろうな?」
動揺を押し隠すために飛び出た言葉は・・・なんでこんな言い方しかできないんだ、僕は。
・・・嫌われたら・・・困るのに・・・。
「・・・なァ・・・・・・アニキも一緒に行かへんか?中国へ」
・・・・・・え!?
「アニキのご両親・・・、弦麻殿と奥方殿の墓はわいの故郷客家の村跡にある。だから、アニキも一緒に行って墓参りせェへんかなと思って・・・」
・・・なんだ、そういうことか。ちょっとビックリした。
両親、か・・・。僕には、たとえ血が繋がっていなくても、ちゃんと育ててくれた両親がいるから深く考えてなかったけど、確かに僕をこの世に産み出してくれた人達ではあるんだよな。
その為に僕が受難を受けるはめになった、そう考えて恨んだ時期もあったけど、全てが終わった今は何の感傷もなくなった。
弦月の言うとおり、墓参りくらいはしておいたほうがいいかもしれない・・・。
「・・・うん、そうだね。墓参りか・・・。考えたことなかったけど、行った方がいいだろうな。じゃあ、よろしく頼むよ。僕は京一と違って、たった一人で中国まで乗り込んでいくような度胸は無いからさ」
そう言うと弦月の顔は・・・
「おゥ!!任せといてェな!!嬉しいなァ、アニキと一緒に行けるんやなんて」
とびきりの笑顔。
う、うわ。心臓が飛び出るかと思うくらい、ドキドキしてる。
「あ、ああ。・・・じゃあ用はこれで済んだんだろ?僕まだ勉強があるんだ。ちょっと休憩してただけだし」
・・・僕の顔、今赤くなってないよな。
誤魔化そうと肩を少し回す。
実は僕はかなり肩こりなのだ。ちょっと机に座っていると、肩とか首とかがちがちにこって結構辛い。
「なんやアニキ。肩こりなんか?」
「ん?ああ、ちょっとな。しょっちゅう身体とか動かさないと、机に座ってるのって辛いから」
「なんや、そんなことなら、わいに一言言うてくれたらマッサージくらいしたるに」
え?
「ちょ、ちょっといいよ、そんな」
「ええからええから。わいアニキの役に立てたらめっちゃ嬉しいし。それに国にいる時は、姉ちゃん達にいっつも使われとったしなァ・・・、結構上手いんやで?」
そう言いながら、弦月は僕の後ろに周り、肩に手を伸ばす。
「!! い、痛いよ、弦月!!」
「う、うっわー、めちゃめちゃこってるやんか・・・、そら痛いはずや。心配せんでもほぐれてくれば、気持ち良うなるはずやから」
ぐいっと肩を掴み、弦月の手が僕の一番痛い所を的確に揉み込む。
「・・・ん・・・んんっ・・・」
最初はもの凄く痛かったけど、弦月の言う通り、しばらく続くとだんだん気持ち良くなっていく。
「どや? アニキ。気持ちええか?」
「うん・・・。凄く楽になった。それにしてもうまいなぁ、お前」
「うちの姉ちゃん方、鬼やからなァ。ちょ〜っと余分に強う力入れただけでも、痛い言うてグーで殴ってくるし。わい、ほんまはあんな姉ちゃん達やのうて、アニキみたいな優し〜い、アニキが欲しかったんや」
僕が優しい・・・? 違う、優しくなんかない。僕は・・・。
「よっし、肩はこんなもんでええやろ。次は首やな」
今度は弦月の手が肩から離れ、首へと伸びる。
く、首!? 首は!!
弦月の手が僕の首に触れたその瞬間、僕の背筋にピリッと電流が走る。
「はっ・・・あぁん」
思わず僕の口から漏れたのは、耳を被いたくなるような恥ずかしい声。
僕は首筋に触れられるのが苦手なのだ。
後ろで弦月の動きがピタッと止まる。ど、どうしよう・・・。ヘンな奴だと思われたかな。
恐る恐る振り向き、弦月の顔を見ると、怖いくらい真剣な目で・・・。
闘いの時以外で、こんな表情を見るのは初めてだ。でも、なんで今・・・。
そんなことを考えた時、いつもより弦月の顔が大きく見えるのに気がつく。
え!?
瞬間、頭の中が真っ白になる。
唇に感じる柔らかい感触。も、もしかして僕、キスされてる!?
焦って、慌てて突き放すが、今度は床へと押し倒される。
何か言おうと開いた唇はまたすぐに塞がれて、口の中にぬるっとした感触のものが滑り込んでくる。
「んっ!! んん〜っ!!」
舌が絡め取られて、息が継げない。
息苦しさに、永遠とも取れるような時間が過ぎた頃、やっと唇が開放される。
「はっ、はぁ・・・はぁ・・・っ」
「・・・アニキ・・・」
僕を見下ろしている弦月の顔は、なんだか泣きそうで。
「な、なんで・・・、お前の・・・、方が・・・泣きそう・・・なんだよ・・・」
苦しくて、荒い息を継ぎながら問いかけると、弦月は僕をぎゅっと抱きしめてくる。
「・・・好きなんや・・・」
「!!」
「わい、アニキの事、めっちゃ好きなんや。めちゃめちゃ惚れてるんや。アニキがほんまはわいのこと、迷惑に思うとるんはわかっとるけど、もうどうしようもないくらい好きなんや!!」
「め、迷惑って・・・そんな風に思った事ないぞ!!」
「そ、そやかて最近アニキ、わいが話しかけると、なんや怖い顔んなっとる時あるやないか。だからわい・・・」
その言葉を聞き、思わず呆然となる。弦月がそんな風に思い詰めてたなんて・・・。
・・・・・・僕ってなんてバカなんだ。
言い出す勇気が無くて、こんなにも弦月を傷つけてたんだ。
「ゴメン・・・弦月・・・」
僕がそう言うと、弦月の瞳からポロッと涙が零れる。
「ち、違う!! 謝ったのは嫌いだからとか、迷惑だからとかじゃなくってぇ!!」
ひとつ息を継ぎ、まっすぐ弦月を見つめ、告げる。
「・・・僕もお前の事が好きだよ・・・」
弦月の濡れた瞳が驚愕に見開かれる。
「あ、アニキ? 今、なんて・・・?」
「だーかーらー!! 僕もお前の事が好きだ、って言ったの!!」
照れ隠しについ怒鳴ってしまう。
「ゴメンな・・・。知られちゃったらお前に、気持ち悪いとか思われるんじゃないかと思って、つい冷たくしちゃってたから・・・」
「・・・ほんまに!? ほんまにわいの事好きや思うてくれるん!? ・・・感激やッ!めっちゃ嬉しいわッ!!」
そう言いながら、今度はガバッと抱きついてくる。
・・・なんだか大きな犬に懐かれてるような気がするのは気のせいだろうか。
だけど、次の弦月の言葉を聞いて、それが間違ってなかったのが分かる。
「・・・な、なァ、アニキ? ・・・その・・・なんや・・・えーっと・・・・・・続きしてええ?」
・・・こ、こいつはっ!! ・・・そう言う事を、わざわざ聞くかなぁ、普通!!
「・・・ダメって言ったら、どうする?」
僕のその言葉を聞いた弦月の表情は・・・、どう見ても、おあずけをくらった犬だった。
ふぅ・・・。
惚れた弱みってやつなのかなぁ。
「そうだな・・・、一つだけ条件がある」
「じょ、条件? なんや、わいにできることなんか?」
不安そうに聞いてくる弦月。
「二人だけの時は、僕を名前で呼ぶ事。・・・守れる?」
それから、あっという間に全ての服を脱がされ、改めてベッドに押し倒された。
あんな風に聞いてきてた割には弦月の行動は素早くて、身体中を滑る手と舌の動きに翻弄され、僕は深く考える前に堕ちて行ってしまう。
「あ・・・っ・・・い、イヤ・・・ぁんっ・・・」
胸の突起を口に含まれて漏れた濡れた声は、信じられないくらい甘えを含んでいて。
「なんや、えらい感じやすいんやな」
嬉しそうな響きを含ませたその言葉に、薄目を開けて弦月の顔を見る。
いつものにこにことした笑いではなく、どこかシニカルな雰囲気を漂わせた笑み。
その瞳の下に、自分の全てをさらけ出しているのだと、自覚した途端、身体の熱は増す。
腰の辺りを漂わせていた弦月の手が股間へと伸びる。
いつの間にか、僕の股間ははち切れんばかりに成長していた。
「っ・・・ぁあ・・・ん・・・んんっ」
掴まれて、上下に軽く擦られただけで止めようのない喘ぎが漏れる。
初めて感じた、他人に触れられる感触に、もどかしいくらいの快感が背筋を走り回る。
先端から溢れたぬめりを掬い取り、手のひら全体に塗りつけるようにして、擦り上げられると、すぐに我慢できないところまで追い上げられる。
「い・・・イヤ・・・も・・・出る・・・ぅっ」
「我慢せんでも出したらええ。・・・わい、龍麻がイクとこ見たい」
「ばっ・・・バカ・・・ぁあっ」
先端のくびれに、爪を掛けられた瞬間、頭の中が白濁し、僕は弾け飛んでいた。
「はぁ・・・ぁ・・・」
「めっちゃ可愛ええなァ・・・もっともっとわいに見せてェな、龍麻の可愛いトコ・・・」
耳元でうっとりと囁かれ、今イッったばかりなのにすぐに身体が熱くなってくるのを感じる。
「しゃ・・・んゆえぇ・・・」
止まらない。もう止めようがない。行き着く先に何があるのか分からないけど、弦月と一緒ならどこへでも行ける気がした。
「っ!!」
思わず息が詰まる。弦月の手が、後ろの奥まった部分へと触れたのだ。
しばらく襞の周りにぬめりを塗り込むように指を彷徨わせ、時々中心を掻くように爪を立てる。
頭では分かっていても、実際触れられると背が粟立つ。
「んっ・・・うぅ・・・」
「大丈夫か?痛いんか?」
僕の中に入ってくる弦月の指。痛くはないけれど、やっぱりちょっと気持ち悪い。
「ん、大丈夫・・・。・・・もっと弦月の好きにしていいから、聞かなくてもいいって・・・」
「!! 龍麻ァ・・・!!」
小さな弦月の叫びと共に、中に入れられていた指が動き出す。最初はゆっくりと、時々折り曲げて内壁を掻くように・・・。
しばらく続くとそこから何かたとえようもない感覚がソコから沸き上がってきて、僕の身体を翻弄し始める。
「あ・・・ああっ・・・あん・・・っ」
いつの間にか指は二本に増やされていた。ソコから聞こえるはずのない淫らな音が耳に入ってくるような気もして、自分ではもうどれくらい恥ずかしい声を上げているのか自覚できない程の快感に、僕は弦月にギュッとしがみついているのが精一杯だった。
触れられていないのに、一度達した前も再び勢いを取り戻していて。
「感じてるんやな・・・ほんま嬉しいわ・・・もっと感じてェな。もっともっと奥でわいを・・・」
突然指が抜かれる。
「あぁっ・・・」
去っていく指の熱さが切なくて、身体の奥が疼く。
その後、脚を大きく抱え上げられ、ソコに押し当てられたのは、熱くて硬い・・・。
「ええか? 龍麻・・・、ほんまに・・・?」
だから聞くなって言うのに!!
僕は答える代わりに弦月の顔を引き寄せ、自分から口付ける。
「んあっ!!」
口付けの甘さにうっとりとなりかけた時、下半身を襲った、串刺しにされるような衝撃。
そのためにさっきまでの快感が全てふっ飛んでしまう。
「ぐっ・・・ああぁ!!」
その壮絶な痛みに、気づかないうちにぽろぽろと涙が零れてしまう。
少しずつ割り裂くように進んでくる弦月の背中に、我を忘れてしがみ付く。
「ぐっ、あかん・・・龍麻・・・息詰めたら進めんで」
「ダメ・・・出来・・・ないよ・・・」
身体を繋ぐ事がこれほどの痛みを伴うことだとは、想像していなかった。
あまりの狭さに、身動き取れなくなったらしい弦月は、衝撃で萎えてしまった僕の股間へと手を伸ばしてくる。
「んんっ・・・うんっ・・・あ・・・っ」
再び触れられた手の生々しい感触に、思わず身体が弛緩する。
そのタイミングを見はからってぐいっと腰を進めてくる弦月。
何度かそれを繰り返した後、痛いくらいに大きく広げられている僕の脚の間に、弦月の腰がぴったりとくっついた。
「龍麻・・・分かるか? わいの全部、お前の中に入っとるんを」
僕の身体の中、一番奥まで届いた弦月。痛みはそのまま続いているけれど、目眩いにも似た陶酔感に頭が痺れてくる。
「めっちゃ嬉しいわ・・・ほんまはずっと・・・ずっと前から龍麻とこうしたかったんや。もしかしてわい、夢見てるんと違うやろうか? もうちょっとしたら、じいちゃんに叩き起こされるんやないやろか・・・」
・・・僕、ひょっとして早まったかな・・・。
人に突っ込んでおいていまさら何言ってるんだ、こいつはっ!!
呆れてものが言えない。
・・・いや、言えないのは苦しいからでもあるけど。
「・・・ほな、動くで。少しの辛抱や、我慢してな」
すぐに良うなるはずやから。
そっと僕に囁きかけた後、ゆっくりと腰を使いだす。
僕に気を使ったその動きに、心の中がじわっと温かくなる。僕を抱きしめる腕の温もり。
出会えてよかった。
今は・・・今は本当にそう思う。
初めて僕は、弦月と出会わせてくれた本当の両親に、心の中で感謝した。
だけどそんなことを考えてられたのは、ちょっとの間だけ。
痛いだけだったはずの繋がった部分から次第に沸き上がってくるのは、指を入れられた時以上に強烈な感覚。
気づかないうちに、僕の腰も揺れだしていて。
「あっ・・・イヤ・・・なんか・・・ぁん・・・ヘン・・・になる・・・」
「なったらええ・・・。わいが全部受け止めたるさかい、なッ」
「あっ・・・あんっ・・・も・・・イ・・・ク・・・しゃ・・・んんっ・・・ゆえ・・・ぇ・・・」
「くっ・・・わいももうアカン・・・一緒に・・・イクで・・・」
「ああっ・・・・あぁぁっっっ!!」
どんどん早くなっていく腰の動きに、僕が2度目の絶頂を迎えた時、同時に身体の一番奥で熱い迸りを受けて僕の意識は、真っ白な闇の中へと飲み込まれていった・・・。
「アーニキーィ。わいってなんちゅう幸せもんやろうなァ〜」
ゴツン!!
「アイタッ。なにすんねん、いきなり殴るやなんて」
まだ微かに残る余韻を持て余し、背を向けていた僕へと抱きついて来た弦月に、げんこつ一発。
「・・・二人の時は名前で呼べって言ったろ? 約束守らないと・・・・・・次は無いぞ?」
僕がそう言うと、弦月は目に見えて狼狽える。
「そ、そんな殺生な〜。後生やからそれだけは堪忍してや。なッ? ・・・それに龍麻かて・・・いっぱい感じてたやろッ?」
ちょっと人の悪いような笑みで、こっそり聞いてくる。
こいつはまた、は、恥ずかしい事を〜。
・・・ま、まあ、痛かったけど、それ以上に気持ち良かったのは確かだけどさ。
そのままぎゅうっと抱きしめられてると、それだけでもう文句も言えなくなる。
「あーあ、はよう春休みにならんかなァ。そしたらわい、弦麻殿のお墓の前で報告するんや。『龍麻はわいが責任持って幸せにしますさかい、安心して眠っててや』って」
・・・そ、それは普通安心して眠れる事、なのか・・・?
なんだか軽い目眩いを感じながらも、この腕に包まれる居心地の良さに、『ま、いいか』とこっそり呟く僕だった。
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