スーパーファミコンのソフトとして女性向け恋愛・育成SLG『アンジェリーク』が発売されたのは、ちょうど恋愛・育成SLGとして最大のブームを巻き起こしたであろう、『ときめきメモリアル』の全盛期の頃だ。
初の女性向けゲームということで期待はしていたのだが、とにかく前情報が少なかった。ほとんどなかった、と言ってもいいかもしれない。ゲーム雑誌にもほとんど載ることはなく、発売後も別に攻略が掲載されるわけでもない。あの頃を思い出すと、今のアンジェリークブームが信じられないほどだ。それほどメディアに取り上げられなかったソフトなのに、なぜここまで広まったか。プレイしたユーザーの口コミである。買った人が友人にすすめ、その友人がまた他の友人に、の繰り返し。今の世の中はパソコン通信というありがたい情報ネットワークもあるので、じわじわとアンジェリークは人気を広げていった。気がつけばPC−FXに移植され、PSやSSでも遊べるようになり、『アンジェリークSpacial2』も出た。今度はシステムを一新、RPGとして登場する。
歯に衣を着せずに言ってしまうと、アンジェリークは「ゲームの出来」という面から見れば、さほど大したソフトではない。何しろまったく育成せずに親密度アップに務めているだけで大陸に人は増えていくし、その大陸が守護聖1人だけの家で埋め尽くされても女王になれてしまう。細かく見ていけば穴だらけではあるが、それでもプレイした女性ユーザーはなんだかんだで何度もプレイし、守護聖とのエンディングを見ようとがんばっただろう。これだけの情熱を引き出すのは、ゲームシステムではない(穴だらけなだけあって難易度は低いので、何度もプレイしやすい、というのはある)。ひとえに、キャラクターの魅力だ。ハードはSFCだったが、画面は綺麗だった。それになまじ雑誌情報がほとんどなかった分、守護聖とのエンディングを見つけること自体が大変だったので、セリフ集めや攻略法探しにも熱が入った。懐かしい話である。なんといってもセーブとロードを頻発するこのゲームにおいて、ハードがSFCというのは非常に助かった。読み込みに時間がかからないからだ。
個人的なことをいえば、私はアンジェリークシリーズの中では初代SFC版がいちばん好きだ。ゲーム中の顔グラフィック(特にオスカー)がいちばん綺麗だったような気がするのは、気のせいだろうか。声を聞いたりアニメを見たいなら、FX版の『アンジェリークSpecial』をおすすめする。PS版やSS版のほうが入手しやすいのはわかるのだが、あの縦長の顔だけはどうしても馴染めない。
『2』はパラメータの追加やさまざまなイベントの追加によって、初代での問題点であった「ゲームとして面白い」という部分も、かろうじてクリアしていた。しかし初代をやりすぎたのか、新鮮な感動はなかったような気がする。あとで、恋愛関連のイベントに期待しすぎていたせいだと気づいたが。それでもビジュアルは綺麗だったし、アニメも綺麗だった。会話での上半身のグラフィックはどうもキャラによる差が激しかったが(たとえばリュミエールはものすごく綺麗なのに、ジュリアスは今一つ目に生気がない、など)、それでも女性向けゲームを語る上では、避けて通れないものだろう。
もう「らーよの部屋」では2回に分けて、言いたいことをすべて言い尽くしてしまった『アンジェリーク』のシリーズ。今このコラム用に書いた原稿を読み返してみても、我ながらほめているのかけなしているのかわからない。
でもとりあえず、ドはまりしたのは事実。守護聖に萌えたのもホントのこと。このゲームのおかげで、人生踏み外し……あわわ、変わったのも一部事実です。ゲームとしていいデキのものだけが萌えられる、ってわけじゃないのよね。アンジェリークというゲームは、当時の女性ユーザーが求めていたものにピタリと当てはまったんでしょう(今でも、私はアンジェがとっても素晴らしい出来のゲーム、とは言えません)。
ゲームとしての出来は『2』の方が良かったけど、評判は『1』のほうがいいしね。ちなみに私はジュリアス様ファンなので、絶対に1のほうが好きです。でも、セイランも好き。セイラン×ジュリアス求む(ないよ、そんなの)。……クラヴィス×ジュリアスの甘々でもいいからさ〜〜、誰か読ませて〜〜(涙)。