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Inter heart



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自分だけが、広い荒れ地にいる。
砂ぼこりが舞い上がり、自分の身体に強く打ちつける。
草木はなく、ただ広すぎる荒野だけがそこにある。
あたりに何かが生きている、そんな気配は全くない。
ひどく孤独だ…
そう感じると、いきなりのどが渇き出す。まるで何かの発作が起こったように…
歩く、ひたすら歩く、欲するモノを手にいるために、探す…
だけど、見つからなくて、もうダメだ…と思ったそのとき、
「なにか…ある…」
遠くに、何かが見える…泉?湖?とにかく水がある!
最後の力を振り絞り、走る!欲するモノを手に入れるために!ただひたすら走る!
どうにか、その泉にたどり着いて、水を手ですくう。
「やっと、てにいれた…」そうしてその水を飲もうとしたとき…
「えっ?…」
あたりには、さっきと同じ荒野の風景。
全く、同じ荒野の風景。
「い…やだぁ…」
「何をしようとも、貴方が欲するものはもう二度と手に入らないのだから…」
心の奥まで響きわたる、低くて恐ろしい声。
二度と聞きたくないその言葉…

 

「いっ、いやだぁっ!」

ものすごい勢いで、飛び起きる。
ものすごい汗、ものすごい息、そして、ものすごい表情…
「また、これか…」
エドガーは、あの日以来こんな夢ばっかりを見てしまう。
その夢はまるで、今の精神状態をそのまま映し出しているみたいに…
もう、あれから一年…
「明日は、セッツァーたちがが来るのに…まずいな…」
そう、明日はセッツァーが来る。当然、エドガーが呼んだのだ。

 

あれから半年くらい、ずっと立ち直れずにただ一人で朝から晩まで泣いていた。
しかしある時、ふと思い出した。むかし、こんな言葉を言われた記憶がある。
「欲するままに求めなさい、そうすれば与えられる…」
いつ、どんなときに言われたかは覚えていない。だけど、それは今の自分に一番必要な気持ち、エドガーはそう思った。
兵士たちを使いマッシュを探しはじめたのは、それからのことだった。
しかし、どうも情報が不足している。ということで、こういうことは、やっぱりそう言うのが得意な者に協力してもらおう!ということで、エドガーが白羽の矢を立てたのは、ロックとセッツァーだったのだ。
「しかし、どうするかなぁ…」
ちょっとだけ、体調の戻ったエドガー。その瞳は、希望の光をたたえていた。
しかし、エドガーの心の中には、毎晩見るあの夢の最後に必ず出てくる一言…
”何をしようとも、貴方の欲するものはもう二度と手に入らないのだから…”
「眠れない…」
エドガーは、そう言ってベッドの横においてあった写真を抱きしめる。
「さびしいよ…」
涙を流しながら、抱きしめる。これ以上二人の隙間が広がらないように

 

 

「久しぶりだな、おいなんだかさらに細くなったんじゃないか?」
ロックが、微笑みながら言う。幸せそうで何よりだ…
セッツァーは対照的に、何が気に入らないのか不機嫌そうな顔だ…
「それで俺たちに頼みたいコトってなんだ?」
そんな不機嫌そうな声で言われると、ちょっと頼みにくい…
しかしエドガー、ここでひるんではいけない、と自分に言い聞かせ、
「それなんだけど…」
そこで、エドガーは口を閉じてしまう。どういうふうに用件を言おうか…
しかしセッツァーは知っていたみたいだ、
「マッシュを捜せばいいのか?」
いきなり、こっちの用件を当てられてびっくりした。なんでわかるの?
すると、ロックがこう続けて言う。
「お前らしくないぞ、エドガー。
 あれだけ多くの人間を使って情報を集めればこの業界の人間は、みんな気づいている思うのが普通だろ?」
まったく、俺たちの情報力をなんだと思ってるんだ?なんてロックは言う。
「そうだな、しかしどうしても見つけ出したいんだ…」
エドガーの表情が、少しくもった。
セッツァーはそこを見逃さずに、的確な質問を投げかける。

「しかし、今さらなぜマッシュを捜さなければいけない?
 すでに一回、旅へ出ていったことがあると聞いたが…」
セッツァーは、いたずらな笑みを投げかけながら訊く。
エドガーは困ってしまった、まるで自分の心がすべてわかるみたいだ…
ロックは、不思議そうに二人を見ている。
「あのときは、ちゃんと”出て行くぞ!”という意志表示みたいなものがあったんだ。
 だけど今回は、朝起きたらマッシュがいなかったっ!…っと聞いたんだ…」
エドガーは、言ってしまったあと、どうにか繕おうとして焦って言葉を付け足した。
セッツァーは、エドガーの心の動きが、なぜか手に取るようにわかるようだ。
今にも吹き出しそうになるのを必死でこらえている。
ロックは、相変わらず不思議そうに二人を見つめている
「とにかく、マッシュを見つけてほしい、もう一度会って話がしたいんだ…」
セッツァーは、からかうようにエドガーに言う
「どうも早めに見つけた方が良さそうだな、弟の方はいろいろなカードを持っている。
 だけど、兄貴の方は、どうもこれが最後の切り札らしいからな…」
セッツァーは、そう言って笑いながら城に用意してある自分の部屋へと行ってしまった。
なんで、あんなに心を読まれるのか?なんだか秘密を握られたような気分だ…
「エドガー?どうかしたのか?」
ロックが声をかけるが、エドガーはうつむいたままで答える。
「ロックも、部屋に戻って休むといい。今日はありがとう、セッツァーは頼まれてくれるみたいだけど、ロックはどうする?ダメかな?」
エドガーが困ったように言うので、ロックは声を張り上げて言う。
「お前が困ってるのに、頼みの一つや二つ聞いてやれないでどうするんだ?」
言う必要はないだろ?なんて言って、背中を向けて手を振りながら、ロックも部屋へ。
エドガーは、友達に恵まれたな…そう思って、部屋へと戻る。

 

 

「いるのか?入るぞ?」
セッツァーだ…なんか話があるのだろうか。
「どうした?何か不都合でもあったか?」
昼間のこともあるし、まずあたりさわりのない会話からはじめる。
しかしセッツァーはおかまいなしに、
「隠さなくてもいい、わかるんだよ…」
いきなり言われて、ドキッとしてしまう。
「寂しいんだろ?」
確かに寂しいし、不安だ。だけどマッシュは帰ってくる、そう信じてる!
何も答えずに待つ。しかし次の言葉は想像を絶するものだった。
「俺が、代わりをしてやろう…」
そう言う風に言うと、いきなりエドガーをベッドに押し倒す!
「何するんだっ!」
エドガーは、必死に抵抗する。しかしセッツァーの口から出た言葉は、
「遠慮しなくてもいい、何もかも忘れるくらいのコトをしてやる。」
そう言って、ベッドの上に組み敷いていく。このままじゃ…
セッツァーの唇が、少しずつ近づいてくる。そして、もう少しで唇が重なるところで、
「やめろっ!」エドガーが叫ぶ!さらに狂ったように、叫ぶ!
「俺は、マッシュ以外の男に抱かれたくないっ!マッシュは、マッシュは…」
そして、次の瞬間、何か大切なものを掘り起こすように
「俺だけが好きだと言ってくれたっ!俺じゃなきゃダメだといってくれたっ!」
乱れた息を整えて、エドガーは
「だから、自分もマッシュだけに抱かれたい、マッシュだけの自分でいたい…」
さらに、続ける…
「それを、あの時言えなかった。だから、気持ちがすれ違ってしまった…だけど、次に逢ったときには絶対に言える。マッシュだけを愛してると絶対に言える。」
もう、マッシュだけしか好きになれないから…そう言える、自信があるから。 

涙が、止まらない…
ずっと思い出さないようにしていた、あの夜のこと…
マッシュは、自分だけを見ていてくれた。自分だけを愛してくれた。
だから、自分もマッシュだけを愛そうと、もうマッシュだけのものになろうと
そう思った、だけど…

セッツァーは、言い始めた。
「そう、言うと思った。って言うより、そう言わなきゃ頼まれることは、できない。
 そう思った。じゃないと、お前の弟がかわいそうだ…」
エドガーが、何か言おうとしたのを制して、さらに
「マッシュもきっと、苦労していると思う。俺もそんなことがあった。それに、今も…」
「えっ?」
「おっと、いまのは聞かなかったことにしてくれ。」
セッツァーは、あわてて言葉をつなぐ。
「それって、どういうことだ?」
エドガーが不審そうに聞くが、
「今は、それは言えない。だけど、そのうちわかるようになるさ…」
それだけ言うと、あっ!という表情で何か用事を思い出したのか、また明日とだけ言って、行ってしまった。

 

 

次の日、セッツァーの表情は実に明るいものだった。まるでつきものが落ちたみたい。
対照的に、ロックの方は浮かない顔をしている。なんだか表情にも苦痛がにじんでいるようにみえるが…
「それじゃ、見つかったら連絡して。待ってるから、ずっと。」
「ああ、任せな。必ず戻ってくるようにしてやるから。」
セッツァーは陽気に言うが、ロックの方は、もうここに意識がないみたいだ…
「それじゃ、また…ロックも頼むよ?」
一応、声をかけるが、なんだか力無い返事をしただけで、セッツァーと一緒に飛空艇の方へと向かっていった。
その後ろ姿にエドガーは祈っていた。
どうか、マッシュが自分のそばに戻ってきてくれますように…

 

 

  

「やっぱり、お前たち双子だな。行動のパターンが全く一緒だ…」
セッツァーが、話している相手は…そう、マッシュだ。
半年間、ずっとあてもなく旅をしていた、しかし半年を過ぎると、それもままならない。
そこで相談をしにセッツァーのところへ来たのである。それで結局居候だ。
「そうか…やっぱり…」
マッシュは、自分が情けなくて、悔しくて…そんな気持ちで、またあの城を飛び出したのだ。あの時のように、また、自分のために…
また、傷つけてしまった。あんなに綺麗な心の持ち主を…
好きだといったのは自分なのに、抱きたいといったのも自分なのに…
その人は、それに応えてくれた。それなのに…それなのにっ!
「もう、兄貴には、逢えない…永遠に…」
マッシュは、戒めるように言った。だけど、次の言葉でそれは否定される。
「それじゃ、お前の兄貴がかわいそうだ。お前の兄貴は、お前に逢いたがっていた、もう一度、もう一度お前と話したいと言っていた。お前が自分だけを好きだって言ってくれたから、自分もお前だけを愛したい…そう言っていたぞ。それでも逢えないのか?もう一度、抱いてやれないのか?」
「えっ?」
マッシュは、目を点にしてもう一度聞き直す。本当に?と…
「俺は、嘘は言わない。お前がここに居たいのなら、追い出す理由はない、だが…」
「だが…なんだ?」
セッツァーが、今までよりさらに険しい顔で言う。
「自分に自信が持てないなら、まだここにいろ。自分に自信がない状態で行ってもお前を想ってくれる人に、失礼だ。お前の兄貴は、お前に絶対に好きだと言える自信があると言っていた。だからお前も、同じだけ…いやそれ以上の自信と愛で接してやらなきゃいけない。」
どうだ?大丈夫か?もう一度…
マッシュは、答えなかった。言葉では…
しかし、その目は充分すぎるほど、語っていた。 

もう誰にも渡さない!絶対に!

 

 

 

エドガーは、待ち続けていた。
今までのこと、マッシュのことを考えながら

マッシュに抱かれていたとき、
本当に幸せだと感じた、今まで本気で愛されたことがなかった。
だから、愛されてると感じたときは、涙が出るほどうれしかった…
マッシュがいなくなって、怖かった、またマッシュがいない生活なのか?もう自分には不可欠な人が二度と帰ってこないと考えたとき。その人を欲しているのに、そばにいない…
今、自分が腰掛けているベッド。
まだ、あの時のマッシュのぬくもりが残っている気がする。
今、自分が抱いている写真。
この頃からすでに、マッシュは自分を想ってくれていたのか?
今、自分が飲んでいるお茶。
マッシュが、大好きだったお茶。こんなに優しい香りがする。

まだ、マッシュは自分を愛してくれているだろうか?

 

 

ドアを思い切りよくあける音、そして…
「兄貴っ!」
ずっと聞きたかった声。ずっと欲しかった声。やっと手に入れた…
マッシュに飛びつく。もう絶対離さないと言わんばかりに。首にしっかりと手を回す。
このぬくもりが懐かしい…たった一回抱かれただけでも、忘れられないこの温もり。
この胸で、泣いてしまいたかった。いままでのことすべて忘れられるように…
ずっと求めていたものがやっと、やっと与えられた…
「ずっと、まってた…」
エドガーが、かすれた声を振り絞って、涙でにじんだ綺麗な目を見開いて言う。
まるで、その相手がマッシュであることを確かめるかのように…
「ごめん…ほんとうに、ごめん…」
マッシュも、言葉を一言、一言かみしめるように、つづっていく。

 二人で、長かった空白の時間を埋め合わせるかのように、ただお互いを抱きしめて、
二人で、お互いにつけあった心の傷を、とめどなく流れる涙で流し去るかのように、
二人は、長い時間をただ抱き合ったまま、互いに相手の温もりをもう手放せない…

 

いつの間にか、二人はベッドの上にいた、互いの唇をむさぼりあう。
相変わらず、身体は離さずに…身体を離したら、また離ればなれになりそうだから
「変わってない…何も…あの夜と同じだ…」
マッシュが、確かめるように言う。柔らかい唇も、綺麗な首筋も、何も変わってない。
自分だけを見つめてくれる、その綺麗な瞳…もう誰にも渡さない!この人の心は、この世で一番、綺麗で繊細で大切なものだから…
「マッシュも、全然変わってない…あの時のままの、自分だけの…」
エドガーも、応えるように言う。自分だけを好きだと言ってくれた、あの夜と全く同じ、暖かくて、力強くて、だけど優しい…誰にも渡したくないこの温もり…
もう、なくてはならないものだから。自分を優しく包んで守ってくれるから…

 

「兄貴?」
「何?」
「エディってよんでいい?」
「えっ?」
「いやなら、いい…」
「いやじゃないけど…ちょっとてれる…」
「じゃあ、いいの?」
「うん…」
「エディ?」
「なに?」
「したい…もう、ガマンできない…いいだろ?」
「うん…」

 

いつ見ても、やっぱり綺麗だと想う、お世辞とかひいき目とか抜きにして…
綺麗すぎる目、柔らかな唇、さらさらと揺れる髪、華奢で繊細な身体…
自分は、この世で一番の幸せ者だと思う。いや、思うじゃなくて幸せ者なんだ!
首筋から耳にかけて舌を這わせる、初めてしたときも、ここはすごく感じてた…
少しずつエドガーの息が荒くなっていく、こうしているとエドガーは、すごく
気持ちよさそうな顔をする。その表情は、たまらなく色っぽい…綺麗すぎる…
「エディ、すごくきれいだよ、俺、このまま気が狂いそうだよ…」
そんな風に言うと、エドガーは嬉しそうな顔をするから、マッシュはさらにエドガーのことが好きになってしまう。エドガーは、人を骨抜きにする天才だと思う。
こんなに幸せな気分になったのは、きっとあの夜以来だ…
早くしないと、ガマンできなくなる…マッシュはそう思い、エドガーの中にできるだけ優しく、濡らした指を送り込む、ゆっくりと、確かめるように…
「本当に綺麗だ、どこもかしこも…どこも汚れてなくて、本当に繊細な感じがする…」
エドガーは、綺麗だというとすごく嬉しそうな顔をする。本当に綺麗だけど、もっともっと綺麗だと言いたくなってしまう、なんでこんなに”綺麗だ”と言ってしまうのかが不思議だ…まるで魔法をかけられたみたいだ…

 

「エディ、そろそろいい?」
マッシュが、もうガマンできないよと言うように聞いてくる。
エドガーは、そんな表情をされるとイヤだなんて言えないよ、と思う。
じっと、目を見つめられて、その欲望にかすれた声に耳元でささやかれたら…
「うん…」
「声、ガマンしなくていいよ…」
そう言って、マッシュがエドガーの中にはいってくる…
マッシュの暖かい感触…
マッシュの力強さ、激しさ…
マッシュの不思議な優しさ…
そのすべてが身体の中にはいってくるみたい…
「すごっ…しまって…いぃ」
マッシュの言葉は、言葉となって出てこない…ただ快楽に溺れるのみ
しかしそんな声が、エドガーに悦びを与える…マッシュと一緒になってるという悦びを
「マッシュぅ…へんに…なりそぉっ…」
そんなエドガーの声に、マッシュはさらに煽られて、大きく激しく腰を揺すってしまう。
その動きは、どんどん激しく熱いものとなっていく。
いままで、ずっと求めていた幸せ。いままでずっと待っていたこの温もり
もう他のものはいらないと思えるこの幸せな瞬間。
こうして、一つになっていると言うだけで、うれしくて涙が出てくる。
こうして愛してるということを、確かめられるから…
こうして守られてるということを、肌で感じられるから…
「エディ…、いっしょ…に、いこ…」
そう言って、さらに腰を激しく揺する、エドガーもそれに応えるかのように力一杯、マッシュを抱きしめる。まるで、もうどこにも行かないでと言うみたいに。

そして、マッシュはその欲望と愛情のすべてをエドガーの奥深くに打ちはなった…
ふたりは、もう二度と抜け出せない、幸福の波に飲み込まれてしまった

 

エドガーは、怖くなって飛び起きてしまった。
またあの時みたいに、マッシュがいなくなってしまったら…
だけどそれは、思い過ごしだった…
しっかりと、マッシュの腕が自分の肩にかかっているじゃないか…
こうして、マッシュの腕の中にいるとすごく幸せな気分だ…
なんだか、すべてを預けられそうな気がして…
もうあんな思いはしたくない…
もう、ひとりぼっちはイヤだ。ずっとそばにいてね…
マッシュの胸で、そうつぶやく

 

あ、もう、あの写真は、きっといらなくなるはず…

 

// End //

 

あとがき

なんだか、すごく読みにくいのを作ってしまったなぁ
しかも、構成がめちゃくちゃですね…
こんな完成度低いのを投稿してごめんなさい。
だけど、いまの私にはこれが限界なのかも…
どうか怒らないで呼んでやってくださいお願いします
後半は、なんだか一作目の反動でとんでもないです。
すごくくどい文章になってしまいました…
この反省を生かしていきたいので、今後ともよろしくお願いします。


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