拍手をありがとうございました。

memo-4/
「な……な、お……?」
「言うな」
こいつが目を白黒させているところなんて、初めて見た。
その気持ちはわからんでもない。私も、まさか自分がこんなところに立つことになるなどとはまったく思っていなかった。
予測すらしていなかったことではあるが、実際こうなってしまったのだから仕方がない。父上のその場の勢いから生じる思いつきに勝てる者など、どうせ母上しかいないのだ。その母上が首を縦に振れば、この国にその決定を覆せる者などいやしない。
母上がまっとうかつ良識ある気質をしていたことを、私はこの国のために素直に喜んでおきたいと思う。
「ですが」
剣術師範として何度か城で顔を会わせたことがあるこの男は、たしか私と同い年のはずだ。同い年の人間から剣を教わるなど絶対にごめんだと最初は思ったが、悔しいことにこいつの腕は本当に見事だった。生まれて初めて勝てないと思わされたのも、こいつだ。悔しいことこの上ないが、この先も剣で勝てるとは絶対に思えない。
もしやとは思うが、まさか父上はそれをご存じだったのではあるまいな。
……絶対に違うとは言いきれない。
「先程言った名で呼べ。その言葉遣いもなんとかしろ、父に露見したらただではすまないぞ」
「そうで……そうか。では改めて三年間、よろしく」
そう言って私に手を差しだしたこの男は、少なくとも未だこの状況に納得できていない私よりは、順応性に優れているようだ。
私もいい加減、自分自身に折り合いをつけねばならないのだろう。こいつに剣以外の道で勝つことの出来る可能性がある舞台を与えられたと思えば、これを活用しない手はない。
ああ、そうだとも。私は、負けることが嫌いなんだ。
「ああ」
だからせめて、仏頂面のまま私も片手を差し出した。

before if...

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